江戸彫金について

刀剣等の装飾技法から始まる江戸彫金の流れ

写真提供:銀座長州屋

 貴族や王族の装飾具に使われた彫刻物は、中国や高麗の影響が多く見られます。その一方で、武具を彩った彫刻は我が国独自の発展を遂げ数百年の伝統があります。  江戸彫金も当初は日本刀を彩る技法として生まれ、その後、武家の工芸品制作に広がり、江戸時代町人文化の隆盛とともに御輿やかんざし等の工芸へと発展しました。  彫金には浮き彫りと象眼の二種類の技法があります。鏨と金槌を使い、金属の表面に精緻な造形を施します。描く絵や紋様により、職人は何種類もの鏨を使い分けます。道具を扱う技術的な熟練度もさることながら、道具自体を作る技能も作品のうちといわれます。  江戸彫金は時代の変遷とともに伝統工芸から工芸技術へと広がり、現代ではその精緻な造形技術が先進のモノづくり分野で活用されています。

刀剣等の装飾技法から始まる江戸彫金の流れ

写真提供:銀座長州屋

 当社では創業から現在まで、江戸彫金の流れをくむ技術者を大切に守り育ててきました。製造・加工の主流がCAD/CAM、NCマシンになっても、鏨と金槌が大きく物をいう工程が依然として存在するからです。またこうした技術者集団による手しごとが、加工精度の高さや高耐久性など「江東彫刻ブランド」ともいえる当社独自の品質基準や社会的評価に結びついています。  使う道具はシンプルですが、思い描いたとおりに彫刻加工できるようになるには少なくとも10年以上の経験が必要です。江東彫刻では今後も彫金技術を当社の要として守り発展させていくために、熟練技術者を中心に世代の偏りなく技術者を雇用し、質・量ともに増大するニーズに応えていきます。

刀剣等の装飾技法から始まる江戸彫金の流れ

写真提供:銀座長州屋

 江戸彫金の伝統技術は、現在では主に御神輿等の装飾金具、かんざし、アクセサリーなどに受け継がれでいます。当社のように各種マスター類、精密金型、ダイカットロール、フラットダイ(平板抜型)等の先進パーツ加工に活用しているケースは少数です。当社の場合、基本技術や職人気質は江戸彫金に通じますが、先進パーツ加工ならではの知識や経験が加味されます。例えばロールやフラットダイ等の刃物部分の加工の場合、抜き型として使用する素材や要件によって刃先の硬度が違ってきます。焼き入れ後の最終的な硬度に合わせて、彫刻加工の加減が必要になる場合もあり、こうした加減は経験に負うところが大きいのです。当社では定年退職後も熟練技術者を再雇用し、オンジョブトレーニングを通じて、数値化できない貴重な技術の伝承に携わっています。